使用貸借の取扱いの変遷
前回、子供が親へ権利金も通常の地代も支払わずに親の宅地に子供の家を建てる使用貸借契約の場合、税務上は借地権相当額(正確には借地法の適用がないので使用権といっていますが、ややこしいのでこのコラムでは借地権とします)に対する贈与税の課税はないことに触れました。
この取扱いは、昭和48年11月1日付の「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」という通達(一般に使用貸借通達と呼んでいます)で明らかにされたものです。
というのも、元々は上記のような使用貸借に係る借地権相当額に贈与税を課税するのが原則でしたが、地域差もあり混乱があったようです。
そこで昭和40年から42年頃までは、近親者の居住用建物を建てるための一定の土地の使用貸借として税務署に申出をしていた場合のみ、使用貸借に係る借地権相当額の贈与税課税をしないという取扱いになっていました。
ところが、昭和43年に確定した大阪地方裁判所の判決で、妻が夫の土地を無償で借り受けてアパートを建てたため、課税庁が妻に対して借地権相当額に贈与税を課税したところ、その取消が認められました。
これを受けて昭和43年以降、土地を無償で借り受けた場合には、一定の申出をしていればどのような形態であっても、借地権相当額の贈与税課税はしないという方向転換をしました。
しかし、実務上から様々な問題の提起があり、昭和48年の上記の使用貸借通達により申出制度を取り止め、使用貸借に係る借地権課税は行わないという現行の取扱いとなったのです。
現在の実務に関わる私としては、使用貸借に係る借地権に贈与税を課税するというのはあまりに無謀で信じがたい思いがするのですが、昭和42年当時から実務に当たられていた先輩税理士の方にお聞きすると、その当時はこの様な課税が当然だという流れだったそうです。
税務実務は、時代の流れにより取扱いが大きく変わる場合がありますが、この使用貸借課税についてはその典型例だと思います。